過去の辛い体験で怒りが消えない

この記事は、過去の辛い体験で怒りが消えない心理状況について解説しています。過去の嫌な出来事を思い出すと強い怒りを感じて、なかなか気持ちの整理がつかない。そんな辛さを抱えている状況に理解を深めるヒントになれば嬉しいです。
※全ての人に当てはまる内容ではありません。自分には当てはまらないと感じる場合は記事に書いてある内容に感覚を寄せてしまわないよう注意してください。

 

過去の体験の辛さ

過去の嫌な出来事によって、自分の信じているものや大切にしていることを否定された感覚が心に深い傷となり、怒りを引き起こしている場合があります。

また、過去の出来事を変えられない、取り返せないことに深い絶望と虚無感を抱いている場合もあります。深い絶望や虚無感を味わうのは精神的にかなり大きな負担です。その感情に触れないよう代わりとなって怒りを引き起こしている場合もあります。

 

怒りを手放さない人もいる

怒りから解放されて穏やかになりたいと願いつつも、心の深い部分では怒りを手放さない(手放すことを受け入れたくない)場合もあるでしょう。

怒りやその背景にある感情を消化するには、自分がその感情に苦しめられている状況にあることを客観的に自己認識する必要があります。心の反応を俯瞰して「私は怒っている状態だ」と受け止め、否定的な判断を加えずに理解することが大切です。そうすることで、感情に支配される状態から抜け出すことが出来ます。しかし、口で言うほど簡単ではないですよね。

強い怒りを長期間抱え込んで頑張ってきている場合、怒りの強さが精神的支えになっていることも多いです。そのような状態にならざるを得ない位辛かったわけです。そのため、自身の感情に苦しんでいる「自分の心理状況」よりも、「怒りを向けている相手(ひどいことをしてきた相手)に意識を向けてしまい、なかなか自己観察に至らない、という現状があります。

相手に怒りを向けて自己観察に至らないクライアントの多くは、自己観察をすることが、まるで嫌なことをしてきた相手を許す行為のように錯覚をしてしまいがちです。相手から意識を離して自分自身の怒り感情に着目し、ましてやそれを消化していこうだなんて、自分を否定するかのような不快さを感じる人もいるでしょう。しかし、「自分の怒りを消化して楽になる」「怒りを抱いている自分をわかってあげる」という本来の目的からズレてしまうと、怒りを消化するステージになかなか移行しません。

このような状態になっていることをセラピストや支援の場で指摘され、ハッと我に返る人も少なくありませんが、感情的な状態に気づくことができず過去の出来事やその相手に意識を向けたままの場合もあります。また、感情的な状態から抜け出すことを強く拒否しする(したくなる)場合もあるでしょう。

多くはないですが、中には相手に怒り感情を抱き続けることでしか繋がりを持てない、つながりを断つくらいだったらラクにならない方がマシ、という強い信じ込みや決意を持っている場合もあります。また、障害や疾患など何らかの理由によって自分の心理状況を客観的に把握できる状態に無い場合もあります。

その場合は内観・内省的な取り組みは難しいので別のアプローチ方法(例・身体的なケア、アートワークなど)で心身の癒しに取り組む方が有効な場合もあります。

 

怒りの正当性を証明したくなる

どうしても過去の出来事や相手に向かう意識が強い例と


してよく起こるのは、自分の怒りの正当性を証明したい心情です。この心情の背景には、自分が受けた辛さを誰にも理解されなかった、味方がいなかった、吐き出す場所がなかったと感じていたり、中には自分が受けた被害を相手に正当化されたり、苦しむこと自体を否定非難されているように感じている場合もあります。辛さに辛さを重ねている状態なため、わかって欲しい、味方してほしい、一緒に相手を非難してほしいというような感情的な状態に陥ってしまいがちです。それが悪いという意味ではなく、そのような気持ちが湧きやすい状態である、という意味です。

しかし、カウンセラーやセラピストはこうした感情的な状態に感情的な共感をすることが本質的な支援に繋がらないということを知っているため、クライアントが望んでいる言葉がけではなく、高ぶった感情を安全な状態に整えることや、自己観察に向かうためのアプローチを優先することが多いと思います。

支援者が感情的な共感をしてくれないことに、クライアントとしては寂しさ・苛立ちが湧く人もいますが、自ら心に取り組む意思が再燃する人もいます。稀ではありますが、セラピストに依存的になる場合もあります。

自分の心に向き合うのは大変な時もあります。どんな場合であっても自分自身の意思で心と身体の両方をねぎらう。そんな姿勢が最も大切ではないかと思います。

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