つづき
タカコ、一旦ストップ。これ以上言うと、タカコの本心でないことまで言っちゃうよ。ごめんね付き合ってくれてるのに。
タカコはやれやれという表情をして、「別にいいけど」と一言残し席を離れた。
残ったルミがミホに食い下がる。
私間違ったこと言ってますか?!あの態度人としてどうなんですか?!ホント、タカコさんてああいうとこありますよね。人の気持ちがわからないっていうか、無神経っていうか。イイ人なのはわかるけど、あの態度はないと思います!
ルミの言葉に、ミホはどっと疲れた。
ルミ、そうじゃないの。どうしよう…何から話せばいいかわからない。
ルミが間違ってるわけじゃないと思う。でも、私はタカコも悪くないと思ってるの。タカコはナナを大事に思ってるし、そもそも、私が引き受けた話をタカコが助けてくれてて・・・。ルミもせっかく力貸してくれようとしてるところごめんね。二人とも悪くないよ。
悪いのは話を引き受けた自分だ。そう言いたいけど、かえってタカコが悪者になりそうで言えない。ルミはナナの設備管理の費用や、その負担で困ってることまでは知らないのかもしれない。勝手に言うわけにもいかない。なんて説明すれば、この誤解を止めれるの💦💦
私が引き受けなければよかったのかな。余計なことしたのかな。ナナを助けたいと思っただけなのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。人に手伝ってもらうのがダメだったのかな・・・
ルミを一人にするのは心苦しかったが、タカコが傷ついてるのが気が気でない。
タカコの様子、見てくるね。ルミはナナに感謝の気持ちで来てくれてるのに、嫌な気持ちにさせてホントごめんね。でも、力貸してくれるって言ってくれて嬉しかった。タカコも喜んでたんだよ。今日は私ひとりで大丈夫だから、後でまた詳しいこと連絡させてね。閉店してから連絡するね。
わかりました。連絡待ってます。お先に失礼します。
タカコはうつむいて肩を落としていた。悔しいのか、悲しいのか、、虚しさともとれるような表情にミホは申し訳ない気持ちで、胸が苦しい。
タカコ、ホントごめん。何も悪くないのに嫌な気持ちにさせてしまった
ミホが謝ることじゃない。なんでルミにあんなこと言われなきゃならないのか、意味わかんない。普段、私が色々フォローしてることも気づいてないんだろうね。
私はいつもこう。訳わかんないことで失礼なこと言われたり、まるで私が悪いことにされる。やってられないわ。私が悪いわけ?だったらもう好きにしろよって感じ。恩着せがましくするつもりもないけど、あんな態度されたらもうルミの面倒見るのも疲れたわ。散々人に迷惑かけといて、まるで人でなしみたいに言ってきて・・・自分が困んないと分かんないんだわ
ミホは何も言えなかった。タカコの言うことを否定したくないが、これはタカコの本音ではないだろうと感じた。
確かにミホは空気を読めないことがある。でも、それはお互い様。タカコは人の色んな側面を、おおらかに笑って見守る優しさをもってる。ミホは内心憧れてるのだった。
私にはない器の大きさがある。みんなの応援してみんなに感謝されて、そのたびにタカコは生き生きするみたいに笑ってた。タカコ自身も、そうしたくて喜んでるからじゃないの?
ルミのフォローも、人の面倒みよいのも、タカコ自身を犠牲にしてやる必要はないよ。でもタカコの本心はどうなんだろう・・・今傷ついてるタカコに、何も言えない。タカコ、ホントごめん、嫌な思いさせてしまった・・・
その日は、ミホだけが残り店番をして過ごした。
気持を整理しようと、ひとつひとつ書き出す。そもそもの発端は自分自身がモヤモヤしていることから始まっている。
- ナナから「お願い」ではなく、「やってあげる」と言われたのがイラっとした
この苛立ち、私はどんな解釈したんだっけ・・・
- 本音を濁して都合よく利用されているような気持ちになって腹が立った
- 上から目線に感じる。自分の都合のいい方に持っていかれてる気がした
腹立つのに引き受けた目的は何だっけ・・・
- ナナの負担や、本音をさらけだす気まずさをわかってあげたかった。察して許してあげたかった。
どう感じて嫌だったのか、何がしたくて引き受けたのか、頭の中がクリアになって少し落ち着いてきたな
私の気持ち、タカコとルミにを伝えたいな。
何を言えばいいかわからなかったけど、正直に話そう。ナナの管理費の負担のことは私の憶測だし、プライベートなことだから言わないでおきたい。
ミホは、翌日2人に気持ちを話した。
実は、私、ナナの提案をされた時モヤっとしていたの。その時の話聞いてもらっていいかな。
ナナは私のためにと言ってくれていたけど、本当にそれだけ?ってちょっとモヤっとしたんだ。私に留守番を任せたい事情があるのかなって。今思うと、ナナにそう聞けばその聞けばよかったんだけど、私の思い過ごしかもしれないと思って聞かなかったの。
タカコは、もしかすると察してくれてるんじゃないかなって思ったんだ。細かいことを聞いたり口出したりしないで、私の負担を軽くするよう力を貸してくれて。どうせだったらみんなが楽しめること考えようって盛り上げてくれて、すごく心強かった。これも、実際にタカコがどう思ってたかはわからないけど、私は勝手にそう思って嬉しかったの。
ルミは、ナナに対して純粋な感謝の気持ちで来てくれてるのに、「なんで」って思うよね。せっかく力を貸してくれたのに、嫌な気持ちにさせてごめんなさい。二人に誤解のままでいてほしくなかったの。ごめんなさい。
良かったら2人の気持ちも聞かせてほしい。
タカコさん、ごめんなさい。私、つい感情的にってしまって。帰ってから落ち着いて考えたら、、タカコさんの気持ちを何も聞かずに、わかってないのに失礼なこと言っちゃった…。タカコさんが意地悪じゃないなんてわかってることなのに、私こそ意地悪な言い方してしまいました。ごめんなさい。
タカコは静かに涙を流していた。
正直、傷ついた。意地悪と言われる意味が分からなかった。実際ナナに事情聴けばわかることだと思うけど、ナナのいい方はミホに失礼だと思った。
だからって、ナナを責めてないし悪く言う気もない。
でも、昨日ミホに「これ以上言ったら本心じゃないことも言っちゃうよ」といわれたのを後から思い出して、本当にその通りだと思った。
ルミとのことだけじゃなくて、自分が腹立った勢いで本心じゃないことまで言ってること実際あるし、もっと別の言い方があるはずなのに、自分はこういうタイプだからって変に開き直ってた。
こうやって誤解生むのも自業自得だったなって気づいて、ルミにも申し訳ないなって思った。だから、ごめんルミ。ミホもごめんね。
私こそ本当にごめんなさい泣
ルミは泣き崩れ、ミホはこの状況が、ただただありがたがった。そして、次からは、自分の意思表示をすることを心に決めた。
ナナの帰宅
旅行から帰ったナナは、店の様子を見て驚いた。
すごい…!こんなに素敵になってるなんて!
みんなが手伝ってくれたおかげだよ。ナナのように詳しい説明は出来ないから、見て楽しんでもらえる商品だけメインにディスプレイしたの☆他にも、色々やったんだよ~
ミホはスマホ写真を見せ、ナナは驚きの連続だった。
でも、私達、いろいろあったんですよ♪ ね、タカコさん♡
詳しいことはミホに聞いて(笑)
夜になり、ナナはミホを夕食に誘った。
いろいろって、なんかあったの?大変だった?
ミホはドキドキしながら、気持ちを伝えることにした。
実はさ、私、ナナにこの話を提案された時引き受けるか迷ったんだ。
せっかく店を借りれても、私は特に企画とかアイディアが無くて、それよりもナナの店番をちゃんとやらなきゃいけないっていう不安の方が先にあったんだ。
でも、ナナは私が引き受けた方がナナも楽なのかなって思い込んじゃってて。私が引き受けないと、別の人を探したり業者にお願いしなきゃいけなくなって大変なのかもしれないって、勝手に思ってたの。
ナナに思ったまま聞けばよかったのに、聞けなかったんだ。
タカコは何も聞かずに力貸してくれて盛り上げてくれたんだけど、
私が色々考えてるのを察してくれたって言いうか、気を遣ってくれた態度が、ルミにとっては「ナナの好意に感謝が無い」って感じたみたいで怒っちゃって。
みんな一旦自分の気持整理して、話のかけ違いだったと気づいて仲直りしたんだけどね。
ナナが少し黙って口を開いた。
ミホ、ごめんね。今、ミホの話聞いて、ずっと胸につっかえてたことが何かわかった。私、自分の正直な気持ちをちゃんとミホに伝えてなかった。
前にも言ってたでしょ、うちの店、旅行とかで開けちゃうと誰かに頼まなきゃいけなくてさ。業者に頼めばいいんだけどその負担がきつかったの。ミホに断られたら、業者に頼もうと思ってたけど、正直に話すのがかっこ悪くて変な言い方しちゃった。
私を責めないように言わないでいてくれたんでしょ。今までもそういうことあったもんね。ホントごめんね。ありがとう涙。
ナナ、ありがと。そう言って貰えて私もありがたい。私もホントごめんね。せっかく旅行から帰って来たところなのに。
いや、言ってくれてよかった。なんかずっとモヤモヤしてたんだよね。でも何にモヤモヤしてるかわかんなかったんだけど・・・なんかスッキリ。ほんとありがと。これからは正直に話すし、全然断ってくれていいから!
ありがとう。私もカッコつけないで無理な時は断るし、今回はホントたのしくてみんなに感謝しかないの!すごくいい経験できた。ナナありがと!!
思いがけない出来事をきっかけに、自分を振り返り結束が固まった4人。大人になった今もこんなふうに「ごめんね」「ありがとう」を伝え合える友人たちがいるーーそれが誇らしく思う彼女たちだった。
この物語は4人の登場人物が心の景色を見せてくれましたが、実際に内観していてよくあるのは、「自覚している自分の気持ち」だけでなく「物語の登場人物の感情や、物事の捉え方」が案外自分の中にもあったと気づく。
イライラ、モヤモヤしている最中は気づかなかったけれど、自分の心の中を多面的に理解すると他者に共感できることが増える。どちらかが正しい・間違っているではない観点に立つ。自己犠牲的にそうするのではなく、自分のために内観する。
内観による気づきが、自分の心を軽くしたり、自分自身も大切な相手の想いも両方大切にできることに繋がる。
奇麗ごとでは済まされない人間社会の中で、私は何度もクライアントさん達の「温かく絆を育むす姿」を実際に目の当たりにしています。そこには自分を大切に扱う姿勢と、勇気がある。私自身が学ばせていただいているなぁと日々実感します。